HOTEL IL PALAZZO

STORY

「Re-Design」STORY vol.4
新⽣「ホテル イル・パラッツォ」の新たな挑戦

Re-Design STORY④新⽣「ホテル イル・パラッツォ」の新たな挑戦

2023年10⽉1⽇、新しく⽣まれ変わる「ホテル イル・パラッツォ」。運営現場ではどのような協議がなされ、開業時の機能を再解釈していったのか?ホテル機能に対する「Re-Design」の⾜跡をたどる。

現代の「ホテル イル・パラッツォ」が導き出した最適解

Re-Designプロジェクトにおいて⽣まれ変わったのは、内装やレイアウトといったハード⾯だけに限らない。ホテルの機能やまちにおける役割といったソフト⾯の「Re-Design」こそ、今回のプロジェクトの主軸だったと⾔える。

「Re-Design」とは、「⾼度な次元で完成した最適解とされてきたものを、さらに最適化すること」という意味を持つ。総⽀配⼈の藤澤は、この意味と向き合った際に「今回のプロジェクトは、かなりハードルが⾼いミッションであることがわかった」と語っている。

現代の「ホテル イル・パラッツォ」が導き出した最適解

「ホテルとは、異質の経験など⾮⽇常が⼿軽に⼿に⼊る場所。ある⼈は新しい出会いや発⾒を、ある⼈は安らぎや休息を求める。必要とされるものは異なるかもしれませんが、いつもいる場所とは違う特別な空間であることには違いありません。

『ホテル イル・パラッツォ』にしかない特別なスタイルやカルチャーとは何なのか。その問いに、私たちは⼀つひとつ答えを出していきました」(藤澤)

まずは「これまで最適解であったものは何なのか」を知るために、過去の資料を洗い出し、当時の状況を知る⼈々に情報を求めた。出逢ったのは、⾒たこともない資料やエピソードの数々。「ホテル イル・パラッツォ」が⽣まれた経緯やこれまでの歴史を踏まえ、「⾃分たちなりの解釈で、どのような体験が提供できるかに挑戦していく必要がある」と、藤澤たちは考えた。

そうして現代に求められる「ホテル イル・パラッツォ」の答えを模索した結果、オペレーションに関わるソフト⾯では以下のような基準を設けることとなった。

  • ●⾃由な活動時間を拡張できるように、16時〜翌12時のフレキシブルなチェックイン/アウト時間を設けた。
  • ●朝⾷・ランチ・ディナーの時間帯に提供されるフードプレゼンテーションを、宿泊ゲストは⾃由に利⽤できる。
  • ●ホテル主催で招待ゲスト限定のディナーパーティーを毎晩開催する。
  • ●当時に存在した4つのBARをオマージュしたメニューを提供する。
  • ●全客室にキングベッドと⼤型のバスタブを設置。現代の⼼地良いラグジュアリー感を創出した。
  • ●ラウンジではサービススタッフもコックコートを着⽤する。
  • ●客室のカードキーケースは、シングルレコードのジャケットと同じサイズに。
    etc.

すべては藤澤たちがこの機会に考え抜いた「Re-Design」であり、今のこのホテルになくてはならない答えとなった。

非日常的な体験を提供するラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」

新⽣「ホテル イル・パラッツォ」においてもっともシンボリックな場所は、地下に広がるラウンジスペースだ。

特別な⾷体験を提供するラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」

エントランスから⼊り、地下に誘われるようにエレベーターを降りると、そこに広がるのは神秘的で奥行きのあるラウンジ空間だ。開業時の姿を知る⼈は、「眠らないホテル」とされていた光景を思い出すかもしれない。

  • 特別な⾷体験を提供するラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」
  • 特別な⾷体験を提供するラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」

この空間は、朝⾷、ランチ、ディナーのほか、アフタヌーンティーなどカフェとしても機能する。宿泊するゲストはもちろんのこと、ゲスト以外のドロップインも⼤歓迎。地元の⼈々にも開放された、まさに現代版の“眠らないラウンジ”なのだ。
この空間では、ゲストたちがリラックスして⾃由に過ごせる特別な時間(=⾮⽇常)をつくりたいと、藤澤たちは考えた。

そうした思いから、ラウンジで提供される夜のメニューには、祝祭やクリスマスなどの特別な⽇に提供されるディナーである「ガラディナー」という呼び⽅を採⽤。「ホテル イル・パラッツォ」にふさわしい⼀品をつくりあげていった。

今回、メニュー考案の中⼼となったのは、プロダクトディレクターの⼭本⼤輔だった。グループ内系列ホテルのメニュー開発をメインに⼿掛け、2022年夏には⼈気の世界的パティスリー「ピエール・エルメ」とのコラボレーションも果たした気鋭のパティシエである。

特別な⾷体験を提供するラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」

「ガラディナーでは、福岡や九州の⾷材を使い、フレンチをベースにしたフルコース料理を提供します。オードブル、スープ、ポワソン(⿂料理)、ヴィアンド(⾁料理)、デセールと⼀般的なコース料理の流れを取りますが、特に最初のオードブルと締めのデセールは『ホテル イル・パラッツォ』ならではのインパクトのある⼀品をご⽤意しています」(⼭本)

  • Re-Design STORY④新⽣「ホテル イル・パラッツォ」の新たな挑戦「秋メニュー」(10〜11⽉)
  • Re-Design STORY④新⽣「ホテル イル・パラッツォ」の新たな挑戦

最初に提供されるオードブルは、はなやかな前菜たちがお⽫を彩っている。まるで絵画のようなコースの幕開けに、ゲストの五感はさっそく刺激されるだろう。

にぎやかなオードブルからはじまり、その後は落ち着いたペースでメインの料理へと続く。最後のデセールは、通常ならポーションは控えめに考えるところだが、ここではラストにもうひとつの楽しみが待っている。

「せっかくコースをお楽しみいただくわけですから、最後の⼀品こそ記憶に残るような⼀⽫であってほしい。そんな想いから、『メイン』と呼べるほど存在感のあるデセールを考案しました」(⼭本)

特別な⾷体験を提供するラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」

オープン時の秋のコースで提供されるデセールは、「モンブランリキッド 2種のブドウのアクセント」。

特別な⾷体験を提供するラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」

「タワー型のモンブランは、⾷事の最後にも⾷べやすいようにすっきりとした味わいに仕上げています。ソースはヘーゼルナッツとキャラメルを合わせて。カシスとフロマージュのソルベを添えています。秋らしい濃厚な果実感も出しながら、2種類のブドウや⻘りんごなどの酸味で、バランスの良い味の余韻を追求しました」(⼭本)

実は、このモンブランのヒントになったのは、以前ホテルの朝⾷で提供していたモンブラン状のポテサラ。数あるメニューのなかでも特にお客さまに好評で、今回のデセールを考えるアイデアのもとになったそうだ。

ランチタイムには、豪華なスイーツブッフェも楽しめる。

Re-Design STORY④新⽣「ホテル イル・パラッツォ」の新たな挑戦ランチブッフェメニュー(イメージ)

開業から現在に⾄るまでの歴史と伝統を踏襲し、親しみのあるメニューにトレンドや季節感などのエッセンスを取り⼊れる̶̶。⽣まれ変わった現代のラウンジで、贅沢な時間を感じてほしい。

未来の「ホテル イル・パラッツォ」に向けて

未来の「ホテル イル・パラッツォ」に向けて

顧客体験をつくる要素は、私たちが考えるよりもはるかに多い。藤澤らプロジェクトチームは、運営に関するすべての要素を再検討し、リニューアルにふさわしい形式を模索していった。

副総⽀配⼈を務める楠直⼈は、サービスオペレーションやハウスキーピングなどのオペレーションを統括する⽴場にある。系列の別のホテルから移ってきたベテランのホテリエである楠は、外から⾒た「ホテル イル・パラッツォ」の印象をもとに、今回の「Re-Design」に求められるホテル像に迫ったと話す。

未来の「ホテル イル・パラッツォ」に向けて

「『ホテル イル・パラッツォ』には、他にはない独特の特別感と存在感があると感じていました。そんな伝統を継承しながらも、決して重たくはないサービスとはどんなものなのか。試⾏錯誤しながらたどり着いたのは、“上質さを感じていただきながらもリラックスできる接客”という答えでした。

そこで⼤切になるのは、ホテルを動かす私たちスタッフ⾃⾝です。開業からの歴史も含めてお客さまに魅⼒を伝えられるように、スタッフ全員が思いをひとつにしてホテルに⽴ちたいですね」(楠)

実は、働くスタッフのうち、「ホテル イル・パラッツォ」の開業時の姿を知る⼈はたった1割にも満たない。

ゲストの⽬にふれるシーンが多いスタッフのユニフォームも、リニューアルに合わせて⼀新される。故・三宅⼀⽣⽒のもとでデザインを学び、開業時にユニフォームを⼿掛けたファッションデザイナー・⼩野塚秋良⽒が⼿掛けるブランドよりセレクトした。

未来の「ホテル イル・パラッツォ」に向けて

ゲストの⽬にふれる機会が多いスタッフのユニフォーム。そのデザインを追求するのは、視覚的に与える印象だけではなく、服装が働くスタッフの意識やモチベーションにも作⽤すると考えているからだ。

⼀⼈ひとりが新たな「ホテル イル・パラッツォ」を愛し、誇りをもって働きながら、そのカルチャーを担う⼀員であるように̶̶。Re-Designプロジェクトの根幹となるのは他でもない、これから迎えるゲストであり、ここで働く「⼈」なのだ。

未来の「ホテル イル・パラッツォ」に向けて

「内側にも外側にも、これまで築き上げてきた歴史や⽂化を伝えていくこと。そして、時代にふさわしい機能やデザインを考え続けていくこと。それが、アルド・ロッシ⽒や内⽥繁⽒からの想いを受け継ぐ私たちの、重要な使命だと考えています」と藤澤は語る。

⾃分たちが何者であるか、そのアイデンティティやDNAを過去から⼿繰り寄せること。そして、本質がブレないように「Re-Design」とは何かを常に問い、考えること̶̶。それが、藤澤たちの考える「Re-Design」プロジェクトだと⾔える。

「ホテル イル・パラッツォ」の、答えのない挑戦はこれからも続いていく。

※「Re-Desing」プロジェクトや今後の動きについては、ホームページやメディアを通して継続的に情報を発信していく予定です。